「こんな所にいたのか平岡! 受験生はもう試験が始まる時間だ。応援も出来たし、そろそろ学校に戻ろう」
鉢巻を巻いた応援スタイルの担任が、俺を見つけて言葉をかける。
「アイツらは今まで頑張ってきたから大丈夫だと思う。みんな合格して高校生活を謳歌してほしいな。平岡も! やりたいことは高校生のうちにやっておいた方がいいぞ。なんてったって青春は一度きりなんだからな!」
そうだ、そうだよ。青春は一度きりなんだ。だったら、俺は。
「……先生」
「なんだ?」
「俺、帝都大附属に行くのやめます」
「…………は?」
担任は、面白いほど不自然な形で動きを止めた。情報処理が追い付いたのか、みるみるうちに顔が青白く染まっていく。
「帝都大附属に行くのやめて、俺、この高校の二次募集受けます。手続きとか願書の用意、よろしくお願いしますね」
担任は固まったまま動かない。仕方なく俺は一人で歩き出したが、数秒後に聞こえてきた大絶叫に思わず声を出して笑ってしまった。
俺は今日初めて、生きてることが楽しいと思えたのだ。
それからの日々は大変だった。担任を始めとする教師陣には猛反対され、毎日毎日考え直すよう説得されたが、俺はどうしてもあの高校に行きたいと、会いたい人がいるのだと言って最後まで自分の意思を貫いた。
猛反対の学校側とは対照的に、両親は意外にも志望校の変更をあっさりと了承してくれた。聞けば、俺が初めてワガママを言ってきたのが嬉しかったらしい。
両親という強い味方を付けた俺は、二次募集でなんとか無事に合格し、晴れて虹ヶ丘高校の生徒となった。
全てはあの日出会った彼女にもう一度会うため。我ながらとんでもない自己中な理由でこの高校に入ったものだと思う。恋は盲目。まったくもってその通りである。

