「……どういう事か説明してくれる?」

 昼休み。体育館裏。

 私は周りに気付かれないように注意しながらなんとか平岡くんを呼び出す事に成功した。不快感を露にした態度で接しても、彼は悪びれる素振りすら見せない。まったく、なんて男だ。

 ……彼が爆弾発言をした後の教室の様子は思い出したくもない。

 否定する暇もなくあっという間に私と平岡くんの周りには沢山の人が押し寄せ、皆芸能レポーターの如く矢継ぎ早に質問を投げ掛けてきた。私はほとんど無視していたが、平岡くんは持ち前のコミュニケーションスキルを駆使して差し障りのない質問だけをすらすらと答える。いや、答えなくていいから否定してよ。私達付き合ってないでしょう!? 私の声は届かない。

 他にも面白半分で騒ぎ出す男子が居たり、ショックで泣き出す女子が居たりと事態は収拾がつかなくなっていた。チャイムと同時に現れた教師によってなんとか事なきを得たが、教室はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図。本当に大変な状態だったのだ。授業開始のチャイムにあんなに感謝した事は今までない。

 平岡くんの前に立っていたポニーテールのあの子も、いつの間にか姿を消していた。

「あれ? もしかして怒ってる?」

 ……当たり前だ。私の気分も機嫌もこれまでにないぐらいに相当悪い。

「私、昨日断ったよね? 面倒事に巻き込まれるのは嫌だからって」
「うん」
「じゃあどうしてこんな事になってるの?」

 責めるような口調で問うと、平岡くんは困ったように頬をポリポリと掻いた。

「昨日の帰り、昇降口で待ってた女の子に告白されたんだ。……あの手紙の女の子。どうやら呼び出しの手紙だったみたいでさ」

 あの後また告白されたのか。ていうかやっぱり読まなきゃダメじゃん。私が渡してなかったらその子は待ちぼうけをくらっていたかもしれないし。……って、そんな告白話はどうでもいいんだけど。何? 自慢? どうでもいいから早く話してよ。

 私は腕組みをした仁王立ちのまま続きを促す。