その答えは恋文で


 放課後の昇降口で一人、彰くんを待つ。

 人のいない学校はいつになく静かで、沈みかけた夕陽がやけに綺麗に映る。

「ごめん、待たせた」

 その声に顔を上げると、優しい垂れ目が前髪の隙間から覗いていた。いつも通りの笑顔で立っていた彰くんは、肩に掛けていたスクールバックを掛け直す。

「帰ろっか」

 そう言って彰くんは微笑む。その顔を見ながら、私は小さく口を開いた。

「……さっき」
「ん?」
「五限の授業、いなかったね。サボリ?」

 〝神田さんと一緒だったの?〟という言葉は飲み込んだ。私はこんな卑怯な聞き方しか出来ない。

「ああ、うん。ちょっと呼び出されたっていうか、話をしてて」
「そうなんだ」

〝何を話してたの?〟
〝相手が神田さんってことは言ってくれないんだね〟

 聞きたいことはたくさんあるのに、私にはそれを聞く権利も資格もない。だって、私はニセモノだから。

「あれっ、彰?」

 背後からソプラノ声がして振り返る。私ははっと息を呑んだ。

 顎のあたりで切り揃えられたショートボブ、白くて華奢な手足。それはあの日見た、まどか先輩の姿だった。

「こんなとこで何やってんの? 誰か待って……」

 まどか先輩と私の目が合う。と、彼女は「あー!」と叫んで嬉しそうに私の元へと駆け寄ってきた。キラキラの笑顔が目の前にやってくる。

「もしかしてあなたが噂の彼女ちゃん? うわぁ、噂通り美人だねぇ!! 彰にはもったいない!」

 まどか先輩にまじまじと見つめられ困惑していると、彰くんは眉間にシワを寄せながら言った。

「……余計なお世話なんだけど」

 彰くんにしては珍しい反応である。例えが悪いけど、塚本くんを相手にしている時とちょっとだけ似ているような気がした。