その答えは恋文で


「で、アンタは何? 周りを騙すのが心苦しくなった? 平岡のことを好きな女に罪悪感でも感じた? そんなの今さらすぎなんですけど」
「……それは……」
「いいじゃない別に。アンタが誰を好きになろうがそれはアンタの勝手なんだから。それに、平岡に好きな人がいたからって何? 今まで通り過ごしてればアンタは彼女でいられるんだからそれでよくない? 何が不満なの?」

 私だって自分勝手で我儘なこと言ってるって気付いてる。由香の言う通り、何もなかったように振る舞えば私は彰くんの彼女でいられる。その日が来るまで、隣に居られる。──だけど、


「…………でも、それじゃ苦しいよ」


 私の口からは蚊の鳴くような弱々しい声しか出なかった。好きだって自覚した途端、隣にいるだけじゃ満足出来なくなってしまったなんて私はなんて欲張りなんだろう。

 由香は「……ほんとバカね」と溜め息混じりに呟くと、真面目な声で続けた。

「怖いんでしょ。平岡の本当の気持ちを知るのが」

 急所を突かれたように胸が痛む。そっと顔を上げると、塚本くんがどうしたらいいのかと眉尻を下げながらこっちを見ているのが視界に入った。

「平岡に好きな人がいるって知って、ニセモノの彼女っていう現状がツラくなって、他の人を思ってる平岡の隣に居続けるのもツラくなって。かと言って告白して振られるのも怖くなった。違う?」

 私は何も言えなかった。

「ま、今まで気付かないふりして逃げてたツケね」

 追い打ちをかける由香の口撃にフォローを入れたのは、困ったように笑った塚本くんだった。

「いやいやいや。まぁとりあえずさ、栞里ちゃんが自分の気持ちを認めたんだからそこは良しとしようよ。進歩じゃん、ね?」
「遅すぎるくらいだけどね」

 由香は腕組みをしながら私に向かって続ける。

「丁度良い機会なんじゃない?」
「え?」
「このままニセ彼女を続けるか、それともこんなバカみたいな関係さっさと終わらせて自分の気持ちを告げるか。ハッキリさせる良い機会なんじゃないの?」

 〝偽彼女〟の約束は一年。その日までまだ数ヶ月残っているが、由香の言う通り、そろそろ決断の時なのかもしれない。

「…………うん。そうだよね」

 私は小さく頷いた。