狼姫と野獣

翌日お父さんは本当にお母さんを連れて鎌倉へ向かった。

刹那はおじいちゃんの家に行ってくるらしい。

私はノワールをお母さんに会わせてあげようと思って、唯の家に遊びに来ていた。


「はあ、唯の部屋落ち着く〜」

「何言ってんの〜?永遠は年がら年中マイナスイオン出てんじゃん」

「……何言ってるの?」

「なはは、癒し系ってこと」


相変わらず不思議ちゃんだけど笑顔が飛びっきり可愛いからなんでも許せちゃう。


「それにモッテモテだもんね。うちのクラスの男子が言ってたよ。荒瀬さんマジ可愛い〜彼氏いんのかなって」

「ふーん」

「ふーんって、マジで恋愛に興味ないじゃんウケる。
……それとも、まだ快くんのこと好きな感じ?」

「……そうかもしれない」

「一途だね、それだけずっと想ってるってすごいことだと思うよ」


唯は優しく微笑んでくれる。

いい加減諦めろって言われてもおかしくないのに、唯は否定はしないんだ。

優しいなぁ、実のお兄ちゃんですら否定してきたのに。