狼姫と野獣

「ただいま〜」



するとリビングに誰かが入ってきた。

振り返ると帰宅した刹那があくびをしながら入ってきた。

だけどこっちを見て固まった。



「げっ、父さんなんでいんの!?」

「は?実の父親になんだその反応は」

「ごめんってだっていると思ってなかったから!」

「まあいい……刹那、お前は俺の味方だよな?」

「へ……も、もちろんだけど!?」



意味がわかってない刹那を無理やり味方にさせたけど納得のいかないお父さんはムッとした顔をした。



「ごめんね志勇。いじわるしちゃった」



そんなお父さんにお母さんは太陽みたいな笑顔で笑いかけた。

お父さんは安心した顔になって微かに笑う。

……笑うとほんと刹那とそっくりだな。見比べていたら刹那がこっちに近づきながら首を傾げた。



「で、父さんなんでいんの?母さんとどっか行くの?」

「ああ、明日から1泊2日で鎌倉に」

「マジ?ふたりきりで!?ずるい俺も行きたかった!」

「ごめん刹那、わたしも今初めて聞いた」



私も初めて聞いたけど、割とよくあるからあんまり驚かない。

お母さんが大好きなお父さんは度々ふたりでデートに出かける。

最近その頻度が増えたなって思うけど、自分のことは自分で出来る歳だし全然いいと思う。



「お忍びだから子どもたちは留守番だ。しっかり勉学に励め」

「はーい」

「えぇ〜?」



素直に返事した私と反抗する刹那。

私たちって相変わらず、双子なのに正反対だな。