狼姫と野獣

「分かった、ありがとう」

「分かったんならもう帰れ」



やっと続いた会話もぶっきらぼうなものばかり。

でもここで帰ったら関係そのものが終わってしまう気がする。



「来るのがダメなら……連絡してもいいかな」

「は?」

「それなら直接会わないしいいでしょ?」



ちょっと強気に笑って見せたら露骨に目をそらされた。

完全に無視?刹那じゃないけど……いい度胸してる。




「ダメならひとつ聞かせてよ。
私がヤクザの娘じゃなかったら今も仲良くしてくれてた?」





無理に笑って質問したら快はピク、と小さく反応した後こっちを見た。



「あの日からずっと考えてる。私が普通の家庭の子だったらこうならなかったのかなって。
手放しで好きって言える関係だったかなって」



言うつもりなかったのに口から出たのは素直な気持ち。

快の顔はみるみる不安げになっていって顔色が悪い。

なんで快がそんな顔するの、泣きたいのは私なのに。



「えー、今日の永遠めっちゃグイグイ行くじゃん。すっげー」

「……ごめん、忘れて」



桐谷が口を挟んできたからハッとした。

言い捨てるみたいに呟いてその場を去る。

部屋を出て階段を降りて、来る時よりドキドキしてるって気がついた。

だって叶わない恋心って分かりきってるのに言っちゃったから。

どうしよう、慎重に仲良くなろうって思ってたのに。これじゃ進展も何もないよ……。