狼姫と野獣

「快、快〜!力さんに握手してもらった!やばくね!?」



桐谷は幹部部屋まで来ると嬉しそうにソファまで走っていった。

そんなゆるっと絡んでるの見ると構えてたのに気が抜けちゃう。



「……マジで連れてきたのかよ」

「隆二さんが言うから仕方ねえじゃん」



その時、ソファに座ってスマホを見ていた快と目が合った。

今度はため息をつかれただけで睨まれはしなかった。



「あ、永遠の連絡先もらったんだ。いいな〜」

「………死ね」



うざったそうに一言呟いて快は立ち上がった。

……あれ、こんなに背が高かったけ?

中学生のイメージで止まってたから思わずびっくりした。



「どこ行くんだよ」

「走りに行く」

「は〜?総長様をひとりにできるかよ。ダメだ、これまでとは違うんだから」

「あー……うざ」



桐谷と話す様子を見てこの前より機嫌がいいように思えた。



「背、伸びたね。何センチ?」



近づいて正面から思い切って話しかけたらじっと見下ろされた。

……ああ、やっぱり寂しそうな目。

どうしたらその瞳の奥の暗い感情は薄れるんだろう。