「ありがとう、連れてきてくれて」

「は、はい!じゃ、私はこれで!」



隆二さんが笑いかけると私を連れてきた子は顔を真っ赤にして走って帰っていった。

ふと視線を感じて校舎を見ると窓から別のクラスの子が覗いている。

はあ、もう最悪。



「あの、目立ちたくないので二度と学校には来ないでください」

「ごめんごめん、だって永遠ちゃんガード固いから強行突破するしかないと思って」



睨みながら忠告したけど笑って流された。

えぇ?この人まだ私のこと狙ってるの?

こうなったら、この手は使いたくないけど仕方ない……最終手段だ。



「あんまりしつこいと組長(お父さん)に言いますよ?」

「それだけは勘弁。でも優しいからそんなことしないだろ?」

「さあ、どうでしょう」



言うつもりないってバレてたけど強ばった顔をしたから少し効いたかな。

脈がないって分かってるならあんまり絡まないでほしいんだけど。



「快に会わせてあげるから連絡先交換しない?」

「快の連絡先も教えてくれたら考えます」

「あいつのこと好きってマジなの?」

「……」



あー、しまった。調子乗っちゃった。

カマかけられただけだったのに好きってバレてしまった。

弱みを握られた、なんて思ったけど隆二さんは笑ったりしなかった。



「いいんじゃない?快って真面目だし腕っ節いいし。
けど、ヤクザだけにはなりたくないって。まあ、分かんないことないけど」

「私はヤクザの娘ってだけでヤクザじゃありません」

「あぁ、そうだね。ごめん」



ムッとして反論したら隆二さんは申し訳なさそうな顔をしながらすぐ謝ってくれた。

あれ、元暴走族の総長のくせして案外いい人?

素直な所はあの意地悪な桐谷より好きかも。