狼姫と野獣





「ねえ、イケメンが校門で永遠のこと探してるみたいだけど行く?」


3学期に入った初日の昼休み、唯が私に話しかけてきた。


「……どんなイケメン?」

「金髪でやんちゃっぽいイケメン」

「あー……」



十中八九、桐谷だ。ほかに金髪の知り合いなんていないし。

学校まで会いに来るなんて……また何か企んでるのかな。



「永遠、久しぶりー」



来てみたら予想通り、そこにいたのは桐谷だった。

胡散臭い笑顔を振りまきながら校門の近くにいる。



「何の用?」


昼休みは人の目があるから手短に終わらせてほしい。話しかける桐谷はこてっと首を傾げた。



「別に?永遠に会いたかっただけ」



……そういう仕草と言葉に何人の女の子が騙されてきたんだろう。一瞬でもキュンとしてしまった自分が悔しい。

でも私は建前だってわかり切ってるから騙されたりなんかしない。



「はあ、今度は私を取り入ったらいいことあるの?」

「なにそれ、永遠って人を疑ってばかりって疲れない?」

「君と会話するほうが不毛で疲れる」

「えー、またつまんなくなったね永遠。なんかあった?」

「……もういい」



揚げ足ばっかり取る態度にイライラする。だいたい、私は暴走族なんかと関わりたくないんだってば。


「あのさ」


背を向けた私に桐谷は声を発した。

構わず歩き出すと「聞いてよ」と少し声を張って呼びかけてきた。






「快はまだ永遠のこと好きだよ」