狼姫と野獣

突然背の高い人が現れたことで周りにいた少年たちは警戒してジリジリ距離を取っている。

小人が巨人に警戒するみたいな、シュールな絵面にちょっと笑えた。



「お嬢、大丈夫か?」

「力さん、お嬢って呼ぶのやめて……」



現れたのは本家の厨房係の力さん。

190cmを超えてるらしい高身長にシュッとした一重の目元。

私はさっきのリュウジっていう人より、淡白ですっきりした感じの力さんの顔の方が好き。

そういえば唯もこういう塩顔がタイプと言ってたっけ。



「リキって……あの力さん!?」



ふと、隣にいた桐谷が興奮気味に大声を上げた。

え、何そのキラキラした笑顔。さっきまでゲスい顔ばっかりだったのに全然キャラ違うんだけど。



「お前ら、何してんだ挨拶しろ!荒瀬組の力さんっていえば、黒帝6代目総長だろうが!」

「6代目!?」

「レジェンドがなんでここに!」



桐谷が頭を下げると、周りにいた子たちも騒ぎ出して一斉に頭を深く下げる。

まるで神様みたいな扱いだ。

それにしても、レジェンドって……。



「力さん、レジェンドってなーに?」

「こら、早速バカにすんな」

「バカにしてないよ」

「笑ってるの見てたからな」

「……えへ」



力さんに近づいてからかったらちょっと怖い顔されちゃった。

でも、嬉しい時のクセで鼻をふくらませてたからまんざらじゃないみたい。