狼姫と野獣

それでも桐谷は着いてきて、外に出る一歩手前で道を塞ぐように前に出た。



「……なに?」

「またおいでよ。さっきの様子だと隆二(りゅうじ)さんが永遠のこと気に入ったっぽいから、歓迎してくれると思う」

「リュウジさん?」

「ほら、さっき会った赤髪の人。あの人黒帝の総長なの」



あの人、と言いながら指さす方向を見ると、階段で赤髪の男が笑いながら手をヒラヒラ振っている。

……気に入ってくれたところ申し訳ないけど、全然タイプじゃない。

手を振り返さず歩き出したら「隆二さんに笑いかけられてノーリアクションな女初めてみた」って桐谷がケラケラ笑ってた。

お生憎さま、 親戚が美形だからあの程度じゃドキッとしない。

なんならお父さんの方が何十倍も魅力的。



「あ、燈さん!なんすか外のあれ、放っといていいんですか?」



外に出たら中学生くらいの子が走って来た。



「あれってどれ?」

「あの車ですよ!」

「……お前、バカ?あれ荒瀬組の車だよ、殺されたいの?」

「えっ、荒瀬組!?なんでこんなとこに……」



これでもかって目を見開いてビックリするその子。

すると、運転席側が開いて中から人が出てきた。