狼姫と野獣

寝起きで呆然としていた目は冷たく睨みつける視線に変わり、快は深くため息をついた。

……そういう反応されるって分かってたけど傷つく。



「快、この前は助けてくれてありがとう」

「お前って分かってたら助けてなかった」



それでも近づいて声をかけたら、目を逸らして吐き捨てられた。

記憶の中の快とあまりにも違って思わず泣きそうになったけど、ふと違和感を感じた。

……ねえ、なんて悲しそうな目をしてるの?



「そういうことはちゃんと目を見て言って」

「……」

「でないと私、快のこと諦められないから」

「……うざ」



心底鬱陶しいそうに呟いたその言葉。

だけど瞳は迷っているみたいに揺れていた。



「上着、置いとくね。さよなら」



でも今日はこれ以上いても意味がないと思うから、ソファの前のローテーブルに快の上着を入れた紙袋を置いて背を向けた。