狼姫と野獣

さっきまでふざけてた刹那の顔は真剣そのもの。

なんで?どこで快が野獣だと思ったんだろう。



「なんでお前がそれを知ってる」

「なんとなく聞いただけ。やっぱりそうなんだ」

「……ああ、15のガキが黒帝の幹部になったって力さんが。で、そいつが次期総長になるって」

「ふーん、だってさ。永遠どうする?」

「え、なんで私に……」

「なんでって、分かってるくせに」



その目をこっちに向けられて、簡単に嘘を見破られた。

……やっぱり私たち、お互いのことよく分かってるな。

刹那に背中を押されて、私はお兄ちゃんに向かい合った。



「お兄ちゃん、黒帝のメンバーが集まる場所って知ってる?」

「俺は知らないな。そんなこと聞いてどうする?」

「知らないなら梟に聞いて欲しい。会って快と話したい」

「やめた方がいい。暴走族なんてろくな奴らいない」

「分かってるよ、だけど諦めきれないから話をつけに行くの。
だって私はあの『東の狼』の子だから諦めが悪いの」



笑って見せたら、お兄ちゃんは驚いた顔をした後に優しく微笑んでくれた。



「……そうだな、諦めなんて俺たちの性分に合わない。
分かった、梟に依頼しよう。結果が出たらすぐ報告する」



そう言ってお兄ちゃんは立ち上がり家を後にした。

それから1瞬間後──私は快の上着を持って、突き止めた黒帝のたまり場に向かうことになった。