狼姫と野獣

「なぁんで父さんって絆と永遠に甘いわけ!?
俺にも優しくしてくれていいじゃん」



と、その時洗面所にいた刹那が戻ってきた。

自分には厳しいお父さんが、私たちに甘いのが気に食わないらしい。



「刹那は俺と同じ顔だから腹立つんだよ」

「うっわ、理不尽〜」



理不尽って言ってるけど、お父さんに真っ向から言い返せるの刹那くらいなんだからね。

刹那は自分がある意味最強ってこと分かってないみたい。



「志勇〜」



ムッとした顔をする刹那をニヤリと笑って観察するお父さんだったけど、寝室からの声に顔色を変えた。



「どうした壱華」

「ファスナーが上がらないから手伝って」

「はぁ?ほらな、やっぱり俺の手が必要じゃねえか」



とたんに笑顔になって寝室に向かうお父さん。

相変わらずギャップがすごい、なんて眺めてたら隣に座ってるお兄ちゃんの前に刹那が仁王立ちした。

なに、またケンカするつもり?



「絆、いっこ聞きたいんだけどいい?」

「なんだ」

「『野獣』って快のこと?」



だけど予想があらぬ方向に外れた。