狼姫と野獣

「お父さんがお休みってことはお兄ちゃん今日は仕事?」

「ああ、本家に1日缶詰」

「うわ……キツいね」



お兄ちゃんが私の隣のイスに座りながら、お父さんが向かった方に目を向ける。

私もなんとなくそっちを向いたら、さっき寝室に行ったばかりのお父さんが戻ってきていた。

でも、なんだかちょっと元気がない。



「お父さん、どうしたの?」

「寝室に入ったら気が散るって追い出された」

「ふっ、ふふっ……そっか」



四六時中お母さんと一緒にいたいお父さんだけど、今日は追い出されてしまったみたい。

笑っちゃったらお父さんも安心したように笑う。

ところが、不意に表情を変えて首を傾げた。



「ん?絆もいたのか。どうした朝早くから」



……って、え?もしかしてお母さんに夢中でお兄ちゃんがここにいるの気がついてなかった?

嘘でしょお父さん!



「母さんに昨日のこと聞いて、永遠が心配で来た。
それに今日は父さんの代理だからどの道こっちで仕事」

「絆、今日は仕事しなくていいかゆっくりしていけよ。お前また徹夜だろ」

「……」

「そうだよお兄ちゃん、目の下のクマがまたすごいことになってるからちゃんと寝ないと」

「……そんなに?」



黙り込んだお兄ちゃんだったけど、私の言葉に驚いて自分の顔に手を伸ばした。