狼姫と野獣

「照れてねーし。嫌いなの」



でも、リビングに新しく介入した声を聞いてお母さんは笑うのをやめた。

そこにいたのは寝巻きの刹那。

ムスッとした顔をしたけど、寝ぐせがすごいことになってるからお母さんは耐えきれず笑っていた。



「やだ、せっかく志勇に似た綺麗な顔してるのにふてくされた顔しないで」

「父さんだって母さんの前以外じゃいっつもふてくされた顔してるし」



刹那はお母さんの視線が自分の髪にあることに気がついて、洗面所に行こうとくるりと回る。

廊下に差し掛かった時、なぜか後ずさりで戻ってきた。



「ふぅん、俺がなんだって?」

「もう、なんでこういう時に限って起きてくるの早いんだよ父さん」



お父さんの声が聞こえてきて、刹那が朝からさっそく絡まれたらしいって分かった。

それにしても珍しいな、家族全員集まるなんて。