「うわ、人相変わりすぎ。そりゃ探しても見つからないはずだ」



嘘だと思いながら足を踏み出してその人に近づく。

暗がりの中、ガタイがよくて身長は180cm近いんじゃないかなって思った。

顔が見えてきて、とても冷たい目をしてるって気がついてそれ以上近づけなかった。

目を合わせたら泣きそうな気がした。

思い出の中の快とはかけ離れている。だけどその険しい表情の中に面影を感じた。



「へえ、黒帝にいたんだ。今なにしてんの?」



快は一向に目を合わせてくれない。

固唾を飲んで様子を見ていたら──快の瞳がこっちを向いた。



「桐谷、帰るぞ」

「はーい。ばいばい2人とも」



だけど視線は私たちには向けられたものじゃなかった。

後ろにいる桐谷を見て、無言ですれ違って去っていく。

かける言葉もなくてぽつんと残されて、路地裏に吹いた風が希望を残さずさらっていく。