後ろばかり気にかけていたら前から足音が聞こえた。

暗がりの中うっすらと人影が見える。

挟みうちされたと思って、方向を変えようと身体を捻ったら小石に足を取られて、思い切り前に転んでしまった。

怖い、逃げなきゃ──四つん這いになって立ち上がろうとしたその時。

バサ、と何かが背中に落ちてきた。




「それ、持ってろ」




近くで聞こえた男の声。

声のする方を見たら広い背中があった。

知らない声、知らない背中。

たぶん組員じゃない。

だけどどこか懐かしい気がして、私はその人の背中を見ていた。