「あぁ?」



お兄ちゃんは怖い顔をして刹那を睨む。

怒りの感情を察知したノワールは膝から飛び下りてどこかに走っていった。

刹那が近づいてきたから、お兄ちゃんはコーヒーカップを置いて立ち上がる。



「何の用だ刹那」

「別に?たまたま通りかかったら面白い展開になってると思って」

「立ち聞きとは悪趣味極まりねえな」



一触即発の空気になってしまったけど、割といつものことだ。

それにしても、刹那はずいぶん背が伸びたなぁ。

お兄ちゃんと並んでもあまり身長差がない。

背が伸びて大人っぽくなってますますお父さんに似てきた。

最近は「組長(オヤジ)と顔が一緒なのに性格が全然違う」って組員がみんな混乱している。



「リビングは共有スペースだから立ち聞きとは言わないと思うけど?」

「お前は相変わらず屁理屈ばっかりだな。
人の揚げ足ばっかりとりやがって。この性悪が」

「うるせえ女たらし、最近いい噂聞かねえぞ。
いつか女に刺されても俺知ーらね」

「このっ……!」



お兄ちゃんは突然拳を放つ。刹那はそれを瞬時によけてタックルをかまそうとする。

はあ、また始まった。

昔からお兄ちゃんと刹那は口論の末取っ組み合いを始めてしまう。

こうやって普段から鍛えてるから、2人ともケンカが強いんだろうな。

とりあえず、私がこういう殴り合いとか無関係の女でよかったって思った。