狼姫と野獣

実はノワール、お兄ちゃんのことが大好きだからこうやって帰る度に甘えている。

ちょっと嫉妬しちゃうけど、お兄ちゃんならいいかなって思える。



「永遠、ただいま」

「おかえり、こんな朝早くからどうしたの?」

「本家で会議の帰り。永遠ならもう起きてるかと思って会いに来た」



だってお兄ちゃんはお父さん同様、私にとっても甘いから。

いわゆる『シスコン』ってやつだと思う。

私にとっては昔から可愛がってくれるいいお兄ちゃんだ。



「ありがとうお兄ちゃん、私も会えて嬉しいよ。
……ところで、クマすごいけど大丈夫?」

「ああ、ここのところ忙しくて。
今日は眠れそうだから大丈夫」



大好きなお兄ちゃんは、また少しやつれている。

せっかくお母さん似の綺麗な顔なのに不健康な顔をしてたら悲しい。

それにまだ17歳なのにこんな無茶してたら身体が持たないよ。



「お兄ちゃん、実家でちょっと寝たら?」

「いや、心配ない」

「ダメ、今逃したらお兄ちゃん寝ない気がする。
せっかくだから休んでいってよ。
今ならなんと、ノワールが添い寝してくれます!」



お兄ちゃんの腕をガシッと掴んで引き止めた。

名前を呼ばれたノワールはミャア、と甲高い鳴き声を上げる。

タイミングよく鳴いたから、お兄ちゃんはびっくりした顔をしたあと、優しく笑った。



「永遠に言われちゃ仕方ないな」



お母さんそっくりな笑顔。

よかった、これ以上働いたら倒れそうな顔してたもん。

お兄ちゃんは靴を脱いで玄関に上がると、自室に向かった。