驚いて目を見開くと桐谷は悲しげに笑った。
「俺の母さんもさぁ、自殺だったんだよね」
「………」
「クズな父親が母さんの他に何人も女作ってさ。
それ以外にいろいろあったけど……まあそういうのが原因で死んだ」
こいつとは赤の他人のはずなのに、言葉がやけに俺の胸に刺さった。
「母さんが死んだことで父親は周りの親戚にすっげー非難されて。
俺をしっかり育てるなら一族から追放しないって約束したんだって」
幸せとは程遠い場所にいる自分と、似たような場所にいるんだと気がついて話を聞く。
「で、そしたらオレが非行に走ることで父親が困るかなーと思って。
つまり父親に復讐するためにグレてんの。しょーもないでしょ?」
首をかしげて聞いてくる桐谷。
俺は頷かなかったけど、そいつの目に似たようなものを感じて目を逸らさなかった。
「けど、黒帝はそういう奴らを歓迎するよ」
桐谷は俺に手を差し伸べ、握手を求める。
「お前は誰に復讐したいの?」
力の籠った桐谷の声に俺は手をとった。
それから右も左も分からないままふたりでがむしゃらに生きた。
気がつけば登れるところまで上り詰めて──2年が過ぎていた。