狼姫と野獣

「うーわ、黒焦げやな」



男が2人、燃え尽きた部屋を眺めていた。

俺が近づいて「……誰ですか?」と声を発するとこっちを見る。

ふと、そいつらの足元に俺が昨日買ったプリザードフラワーがあることに気がついた。

いつ落としたのかすら覚えてない。

それをぐしや、と潰して男たちはニヤリと笑った。



「俺たち?俺たちは荒瀬組のもんや。
お前の死んだ父ちゃんが残した借金を返しにもらって来てん」

「借金……?そんなの、去年返済したって」

「残念、闇金が残ってみたいやな。
なんや、ここ3日連絡無かったから夜逃げでもしたんやないかと思うて」

「いくらですか?」

「えーと、2千万やったかな?」



2千万?そんな大金、支払えるわけない。



「俺は、どうすれば……」

「いや、もう大丈夫。お前の母ちゃんと妹が死んだってことはそういうことや」



………は?



「何割かお前の手元に残るから安心しとけ」



パズルのピースが合致するみたいに、絶望の扉が少しずつ開いていく。

男たちはすぐいなくなって、それでも俺はその場に立ち尽くしていた。



「荒瀬組……?」



呟いて、全てが繋がって、何かが崩れ落ちていく。

俺の母さんと妹は、荒瀬組のせいで死んだ……?

借金返済のために、無理心中を図ったっていうのか?



「なんで……」



吐き気と一緒に疑問が口から出る。

母さん、2人揃えば“快晴”だって、言ったのはどこのどいつだよ。

だったらせめて晴は残してくれよ。

それが出来ないなら俺も殺してくれたらよかったのに。

なんで俺だけ生かしたんだ。

こんな地獄で、どう生きていけっていうんだよ。