狼姫と野獣

団地で何かあったのは間違いなかった。

しばらく歩いて、辺りに少し焦げ臭い匂いが漂っていることに気がついた。

俺は不安になって走って団地に向かう。

住宅街を抜けて団地に入ると──空へ立ち上る黒い煙が見えた。


……あれは、俺の住んでる建物からだ。


冷や汗が出てきて全力で走る。

小脇に抱えたプレゼントをガシャガシャと揺れる。だけどそれどころじゃなかった。



自分の住んでる建物に差し掛かったところで野次馬を見つけた。

その人たちはみんな同じ方向を向いて深刻な顔をしている。

上の階じゃない、下を見ている。

嫌な予感が確信に変わる。緊張でもつれそうな足をどうにか回転させて現場に向かう。

やがて何十と集まった野次馬の隙間から見えたのは──









俺たち家族が住んでいる部屋の窓から、黒煙が上がり、炎が出ている光景だった。