狼姫と野獣

今日はお母さんもお父さんも入学式には来ていない。

その代わり護衛の人がひっそりとカメラを回している。

と言っても、その強面な顔面じゃカタギじゃないってバレバレなんだけど。

同級生や保護者から白い目で見られながら、入学式後のHRを終えてその日は解散になった。



「あれ〜、荒瀬のお嬢はひとりぼっちかよ」



ひとりで教室を出たら、ふとこっちに向けられたトゲのある言葉。



「……刹那(せつな)



ムッとして振り返ると、そこに居たのは双子の弟の刹那。

二卵性双生児だから顔は似てないし性格も真反対。

本当に姉弟?って言われるくらい全然違う。



「永遠くらい美人だったらすぐ友達できると思ってたけどなぁ。
まあ類は友を呼ぶって言うから、いずれ可愛い子が友達になったら俺に紹介して」

「ばっかじゃないの?
だいたい私たちに友達なんてできないよ。
普通の家庭じゃないんだから」

「え?俺もうひとり仲良くなったやついるけど」



え、もう友達できたの?

すると刹那の隣に、中学生ほやほやにしては背の高い男の子が立っていたことに気がついた。

いいなぁ、社交的で人付き合いの上手な刹那は。