狼姫と野獣

「快、あの……最近連れてくる女の子のことなんだけど」



沈黙が続いて数分後、母さんが口を開いた。



「永遠のこと？」

「あの子、荒瀬組の組長の娘なんでしょう？」

「うん、けど親がヤクザだからって子どもは関係ないよ」

「………そうよね、関係ないよね。ごめん、なんでもない。
お母さん、もう寝るね」



母さんは自分を言い聞かせるように独り言を言いながら寝室に向かう。

最近、母さんの様子がおかしい。

ギャンブル好きの最低な父親が3年前に死んでやっと俺たち家族は解放されたのに、今年に入ってからずっと暗い顔をしている。

どうやったら元の明るい母さんに戻るんだろう。

だから俺はもっと頑張らないといけない。

そう考えながら支度をして家を出た。