あれから快に想いを伝えられなくて、私はモヤモヤした心境のまま過ごしていた。

季節はもう夏。あと少しで夏休みが始まるからその前に告白したいな、と思ってるけどあと一歩の勇気が出ない。



「あー、寝不足」



朝、ふらふらしながら抱きついてきたのは唯。



「どうしたの?」

「ミコが子ども産んだの。徹夜でお世話してたから眠い……」

「へぇ……ん、ミコって誰?」

「ウチで飼ってるネコだよ。元気な子4匹産んだの」



唯、猫っぽいと思ってたら本当にネコ飼ってたんだ。

唯は自分の話をあんまりしない子だから、こういう風に突然知ることが多い。



「けどママが4匹は無理だって言うからいずれ里親に出さなきゃいけないんだよね」

「里親のあてはあるの?」

「ないんだよねこれが。どーしよっかなと思って」

「……私、ちょっと興味あるかも」

「お、いいねぇ。今日にでもウチ来る〜?」

「うん!」

「ふふ、いい返事」



大きな声を出しちゃったからちょっと恥ずかしかったけど、唯に笑われるのは嫌いじゃない。

目じりの下がった笑顔に釣られて笑ったら、ふと誰かに呼ばれた気がした。



「永遠」



と思ったらやっぱり聞き間違いじゃなかったみたいで、教室の入口に快がいた。



「永遠、今日の放課後空いてる?」

「今日は唯の家に行くよ」

「そっか、分かった。大したことじゃないけど、相談したいことがあるから空いてる日があったら教えて」



相談ってなんだろ。

そう思っていたら唯がのしっと体重をかけてきた。



「ねえ〜、あんなに毎日カイくん来るのに付き合ってないの?」

「付き合ってないって……あの、重いよ唯」



何回目だろう。

快と付き合ってるの?って聞かれるの。

ただ私が好きなだけ、だなんて口が裂けても言えないけど。