「お前、何してんだよ」



どうやってこの場を切り抜けようか考えていたら、快の声が聞こえた。

見たことないくらい怖い顔をしていて、走ってきた快は私を守るように前に立った。



「誰?」

「快、いいよ。大丈夫だから」

「カイ?……あー、荒瀬刹那の腰巾着?」



人を傷つけるような言葉を平気で吐き出す桐谷。

自分に言われるのは何ともないのに、それが快に向けられたら一気に頭に血が上った。



「は?そんな言い方ないでしょ。さっきから何様なの?」

「……え、怒るんだ。おもしろいところあるじゃん」



私の豹変にびっくりした桐谷は、怖がることなく満足気ににっこり笑った。

……この反応、刹那を思い出して余計イライラする。



「そんな警戒しないでよ。永遠優しそうな顔してるからもっとチョロいのかと思ったらそうでもなかったから諦める。
んー、そしたらどうやってアプローチしようかな」



あーあ、と残念そうに頭の後ろで両手を組んだ桐谷は私たちに背を向けて歩き出した。

イライラする反面、私と変わらない歳の子が暴走族なんかに振り回されて、少し可哀想だなと思った。