狼姫と野獣

「俺たちの家業は平和に生きてきた奴らの人生を踏みつけにする。
俺らに関わって死んだ人間はごまんといる」



帝王は顔を上げて無表情で語ってきた。



「ヤクザってなぁそういうもんだ。俺たちは生きるために平気で他人を地獄にたたき落とす」



この人は、何のためにその話をしてるんだ。

俺をヤクザにでもスカウトするつもりか?



「だから、子どもたちの高校卒業を機に縁を切るつもりだ」

「……え?」

「闇を生きることを決めた絆とは違う。
あの二人は真っ当に生きることを望んでる。
だからこそ突き放す。裏社会とは無縁でなけりゃならねえ」



しかし、俺の考えは的をはずれた。

思ってもない発言に声が上擦る。

そしてその表情は今までと打って変わってやわらかいものに変わっていた。



「永遠と刹那も、二度とこの家の敷居は跨がせないつもりだ。
だからこそ、頼れる人間がいねえとな」



不意に俺の目を見つめ、そして微笑んだ。

驚いた、笑顔が刹那によく似てる。



「永遠をよろしく頼む」



切実な父親としての願いに戸惑った。

俺を頼るなんてお門違いだ。

一度は永遠を裏切った人間なのに。