狼姫と野獣

「よく来た、座れ」

「……はい」



本家の応接間のような場所。

狼が描かれた襖が特徴的な和室だった。

あぐらをかいて座る帝王の前に正座して座る俺。

汗をかく季節じゃないのに冷や汗が止まらない。

それほど格が違うと身を持って感じた。



「夏だったな、お前の家族が亡くなったのは」

「っ、はい」



唐突に話を振ってきたから顔を上げる。

その目はただ俺に向けられているだけで全く心境を読めない。

光のないその瞳が、ただ恐ろしかった。



「あの日、学校から帰った永遠は嬉しそうにお前のことを語ってたよ。
『快のお母さんへのプレゼントを一緒に選んだ』って」

「そう、だったんですか……」

「あの後お前は家族も住む場所も失くして……。
13のガキがたった独りで投げ出されて苦しかったろう。すまなかった」



その人は突然俺に対して頭を下げてきた。

『闇の帝王』がこんなガキに対して何やってんだ。

俺は慌てて身を乗り出した。



「頭を上げてください!あれは結局……」

「結局半グレが悪いにしても、“たまたま違った”だけだ」



近づいてかち合った視線。

それだけで気圧されたて後ずさりしてしまった。

こんな恐ろしい人間と永遠は本当に血が繋がってるのか?

信じられないほど恐ろしく勇ましい。