次の日、入院していた琥珀が帰ってきた。

琥珀はマスクをしている以外は何も変わらない。

でもそのマスクの下に傷があると思うといたたまれない。

唇を3針縫って殴られて歯も抜けたらしい。

私は琥珀に出会ってすぐに抱きしめた。

ちゃんと生きてるって確認するように。

琥珀と抱き合ってようやく実感して、その後はいつも通り話せた。



「傷、痛いよね。無理して話さなくていいよ」

「痛み止め飲んでるから大丈夫。
それに抜けたとこは元々差し歯だったから大丈夫」

「でも痛かったでしょ?」

「痛みより恐怖心の方が強かったかな」



琥珀が目を細めたからマスクしてるけど。笑ってるんだってわかった。

でもまだ笑って誤魔化せるほど心の傷は癒えてないでしょ。

そう言いたいけど涙が出てきてうつむく。



「泣かないで、ごめんね」

「どこにもいかないでね、琥珀」

「うん、約束する」



人を失うことへの恐怖ってこんなに恐ろしいんだ。

少し快の気持ちが分かった気がして苦しくなった。