狼姫と野獣

「これ、桐谷にせがまれて作ったブラウニー。
ごめんなアイツとバレンタインお揃いで」



シンプルな紙袋に包まれたそれ。

両手を差し出して受け取って呆然とする。

しばらくして笑顔になっている自分に気がついた。

私が笑うと快も幸せそうに笑う。

それだけで嬉しくって心が満たされる。

単純だ、と思うけどそれでいい。

何気ない会話で笑える関係、それが私の望んだ未来だから。



「ブラウニー作れるの!?すごい」

「今度作り方教えてやるよ」

「うんうん、約束ね。次は絶対会いに行くから」

「ああ、分かった。おやすみ」



快は最後にハグをしてくれた。

冷たい身体……私と会えるこの数分のためにこの寒空の下バイクで来てくれたんだ。

それだけで優越感に浸る私はとっくの昔に手遅れ。

去っていく快の後ろ姿を見つめて、改めて好きだって実感した。



「青春だな、組長(オヤジ)には黙っててやるから永遠も早く戻れ」

「うん、ありがとう」



敷地に入ると力さんは白い息を吐きながら笑う。

精一杯の笑顔でお礼を言って、赤い鼻の力さんに笑顔でバイバイした。