バレンタイン2日前は凍えるような寒さだった。

今日は琥珀の大学入試当日。

琥珀が受験なのに私の方がドキドキして変な感じ。

終わった頃を見計らってスマホから連絡してみるけど既読はつかない。

……うーん、もしかして問題解けなくてショック受けてるとか?

琥珀に限ってそれはないか。

終わったら一緒にご飯食べようねと約束してたから気長に待ってよう。



ところがその直後──琥珀が攫われたと一報があった。

攫った相手は荒瀬組が警戒していた半グレらしい。



「どうなってるの!?」



道理で本家がバタついておかしいと思った。

居てもたってもいられず、一足先に本家にいた刹那に問いつめた。



「受験会場から出た琥珀が狙われた。行先はおそらく大阪だ」

「大阪?」

「ここからは俺の見立てだけど……たぶん裏で糸ひいてんのは覇王だ」

「覇王って、たしか……」

「覇王は西雲会の会長・望月大希。同業者(ヤクザ)だよ」



どういうこと?琥珀を攫ったのは半グレじゃなかったの?

それに西雲会が荒瀬に手を出すはずない。

組の情勢に詳しくない私でも知ってる。

昔、西雲会と荒瀬はお互いを侵害しないように誓約を結んだ。

攻撃はされないはず。だけど相手はヤクザ。

裏切りだって日常茶飯事なんだ。

油断してた、本当にこういうことが起こる世界なんだって。