「な、頭いいだろ琥珀」


準備が整ったみんなは駐車場へ向かって、誰もいなくなった部屋で刹那が話しかけてきた。


「頭がいいのもあるけど、変化に敏感なんだね」

「うん、すっげえ周り見てるよ。スパイみたい」

「……スパイかあ」



ぼんやり呟くと刹那が体を曲げて下から私を覗き込んでくる。

な、なに?



「最近上の空じゃん、快と会ったりした?」

「……会った」



突然の追求に焦って後ずさり。

嘘は通用しないから本当のことを伝えた。



「ふーん、あいつも前向こうとしてんだ。
仲直りできそう?」

「たぶん……」



……仲直りどころかこの前キスされたなんて絶対言えない。

曖昧に答えたけど刹那はそれで満足したみたいで足取り軽くその場を離れた。


あ、朝早くて快にあけましておめでとうって言ってないや。

家族がいない間に電話しようかな。

本音を言うと会いたいけど。

なんて、私も正月から快のことばっかりで全然煩悩が抜け切れてないと失笑した。