狼姫と野獣

私は驚いて声が出なかった。

視線がハーフパンツを履いているその子の脚に向いてしまう。

それは11歳のものとは思えない、折れそうなか細い脚だった。

これって……。



「晴、この前話してた永遠だよ」

「わぁぁ、その人が!?綺麗な人、はじめまして」



考える私の前に弾ける笑顔。

私……こんなかわいい子に失礼なこと思っちゃった。



「初めまして、永遠です。晴ちゃんに会いたかったから会えて嬉しい」

「晴も会えて嬉しい!どうぞ上がって。お茶とお菓子用意したの」

「ありがとう」



興奮気味な晴ちゃんはとにかく明るくて可愛い子だなって思った。

家に上がらせてもらって、晴ちゃんが作ってくれた手作りのクッキーと紅茶を飲みながらいっぱいお話した。



「晴の脚ね、生まれつき動かないんだ。初めから動かないから不自由じゃないよ」



ふと、晴ちゃんは自分から生い立ちを語り出した。

お母さんのこと、車椅子のこと、学校での友達のこと。

それを前向きに話せる晴ちゃんが本当にすごいと思った。



晴ちゃんに比べたら、私の悩みなんて本当にちっぽけなものに感じる。

……いや、こういう考え方も失礼かな。

私が思う苦労は、この子にとっては当たり前なんだ。

私も強くなって、今つらいって思ってることも笑い飛ばせるくらいにならないと。