狼姫と野獣

駆け足で家に戻ったけどまだ誰も帰ってなかった。

……刹那、お父さんに絡まれてるんだろうな。

ある意味バレなくってよかった。そう思いながら片付けを再開してすぐ、玄関のドアが開いた音がした



「永遠、助けて〜!」

「あ?永遠を巻き込むなよ」

「あー、もうダルいって!」



刹那の声に走って玄関に向かったらべろんべろんに酔っ払ったお父さんがと肩を組む刹那が。

お酒強いお父さんがこんなに酔うなんて珍しい。



「ごめんね刹那。でも来てくれて助かった〜」



お母さんはその後ろで困り顔。

お母さんが制御できないほど飲むなんていったいどうしちゃったの?



「ほんとだよ、父さんに絡まれた組員がまじで可哀想だわ」

「はあ?かわいがってやっただけだろうが」

「死ぬほど飲まされて顔真っ青にしてたじゃん。
まともな会社ならアルハラとパワハラで速攻クビだからな!」

「仕方ねえだろ、あいつら壱華を見て鼻の下伸ばしやがって。
むしろその程度にしてやった俺を褒めろ」

「褒めねーよ」



刹那に支えられながら靴を脱いだお父さんは玄関に座り込む。



「それに、どうせお前らに迷惑かけれんのもあと少しだ」



すると下を見ながらお父さんはポツリと呟いた。

……そっか、私たちが普通に生きるためにはいずれこの家を出なきゃいけないんだ。

想像するとそれだけで寂しい。



「……俺はだる絡みされなくて清々するけど」

「相変わらずの減らず口だな。照れ隠しってことにしといてやるよ」

「いって!待ってデコピンでこの威力ってどういうこと!?」



余計な口を挟んだ刹那はお父さんから強烈なデコピンを食らって悶絶。

お父さんと同じ顔なのに、刹那って表情がコロコロ変わっておもしろい。

微笑ましくて笑うと「笑ってないで助けろって」と睨まれたからごめんと謝っておいた。