狼姫と野獣

「……あっ、んんっ」

「声、抑えて」



待って、理解が追いつかない。

私が知ってる快はこんな器用じゃない。

こんな気持ちよくてとろけてしまうようなキスをする人じゃない。

……そうだよ、快の方がたくさん知ってるんだから。

桐谷が言ってたじゃん、いろんな女の人とそういう関係を持ってたって。

経験の差を感じて悲しくなる。

私なんてすがりつくので精一杯なのに。



「……ぷはっ」

「息止めてた?苦しかったろ」



唇を離した快は私を見ていたずらっぽく笑う。

経験が全くないことがバレて悔しいからふいっと顔を逸らした。



「これが俺の気持ちって言っても信用できない?」

「……言葉で伝えてほしかった」

「わかった、今度からはちゃんと言葉で伝える」



拗ねてボソボソ言ったこと、たぶん嘘だってバレてる。顔が赤いの自分でも分かるし。

でもその矛盾を指摘しないのは快らしい。



「もう帰る、みんな心配する」

「うん、風邪引くなよ」

「大丈夫……知恵熱は出るかも」



本気で言ったのに快は満面の笑み。

あんまりにいい笑顔だから吊られて私も笑いながらバイバイした。