狼姫と野獣

「ごめん快、リビングにいて出られなかった」

『ああ、そんなことだろうと思った』



ワンコールで出てくれた快はある程度予想してたみたい。

電話の向こうで風の音が聞こえる。

快は外にいるのかな。



『てかまだ言ってねえの?俺のこと』

「言うタイミング逃しちゃって」

『あー、そういう感じ』

「うん……それで快はなんで電話してくれたの?」

『お礼、直接言いたかったから』

「え?」

『迷惑じゃなかったら外出て。駐車場側にいるから』



え、待って……快が今家の近くにいるってこと?

私は片付けを投げ出して走って家を飛び出した。

組の駐車場を抜けて路地に出ると、白い息を吐きながら待っている快の姿があった。



「快、寒かったでしょ!」



声をかけると快は人差し指を立てて「シー」と息を吐く。

暗がりに吐いた息が白くただよう。



「親父さんに見つかったら大変だろ」

「ごめんね、嬉しくて」



快が会いに来てくれた。

ダメなことって分かってるのに嬉しくて感覚が麻痺してる。