そんな野暮なことは詮索しないけど。

だってお兄ちゃんが見初めた人だもん。

とにかく今日の目的は琥珀さんと仲良くなること。

そのために朝早くから準備したんだから。


「リビングにどうぞ。みんな琥珀さんたちが来るの楽しみにしてたんです」


気合を入れて琥珀さんをリビングに案内する。

その日はたくさん話してたくさん食べて、まるで夢みたいに楽しい時間を過ごした。





「ふふ、琥珀の連絡先もらっちゃった」



数時間前まで琥珀さんって呼んでたのに今じゃ呼び捨てできるまで仲良くなった。



「いーなー、結局琥珀俺に連絡先教えてくれなかったし」



片付けをしながらブツブツ呟くのは刹那。

ふたりきりのリビングが今はとても広く感じる。



「だって琥珀利用してお兄ちゃん怒らせる気だったでしょ。
取り返しつかなくなるからやめといた方がいいよ」

「えー、だって絆いじりがいがあるから」

「……信じられない、刹那って本当に性格悪いね」

「え、マジギレ?ごめんって」



刹那は本当に変わってる。

お兄ちゃんにはいくら嫌われたっていいのに私に嫌われるのはイヤなんだ。

変なの、うろたえる刹那を見ていたら机に置いたスマホが震え出した。

あ、電話だ。スマホに近づいて覗き込んだら、画面に表示された名前は『快』だった。