狼姫と野獣

「永遠、教科書のお礼にこれあげる」



昼休み、快が教室に来て片手をグーにして私の前に差し出す。

両手で受け取るような仕草をすると快は手を離して、コロンと手のひらに飴が転がった。



「あ、これ唯がくれたのと一緒。こういうの好きなの?」

「まじ?気が合うじゃんカイくん」

「俺の趣味じゃないよ、妹が買って欲しいっていったから」

「快、妹いるんだ」

「うん、(はる)って言うんだ。今小5」



妹の話になると途端に笑顔になる快。

妹のこと好きなんだなって、言わなくても伝わった。



「快の妹かー、きっとかわいいんだろうな」

「……今度会いに来る?」

「え、うん!」



即答したら「じゃあ妹にいつがいいか聞いておく」って答えて快は教室を出た。



「……永遠〜、嬉しそうだね」

「そ、そう?」

「ふふ、乙女って感じ。かわいいね永遠」

「からかわないでよ……」



照れちゃって唯の顔が見れない。

私の気持ちバレバレだって分かったら恥ずかしい。

ああ、もう。こういう時刹那みたいにうまくかわせたらな。