狼姫と野獣

刹那をギロッと睨んで教室に戻る。

ちょっとイライラしながら2限を受けたけど、授業終わりに快が教室に来てくれて和んだ。

快は刹那と違って授業が終わったらすぐ教科書を返してくれた。



「今日バタバタしてすっかり忘れてた。ありがとう」

「寝坊しちゃったの?」

「いや、今日はバイトが終わらなくて」



話しながら教科書を受け取って疑問に思った。



「え、バイト?よくあの先生に怒られなかったね、なんて言い訳したの?」

「あー……俺、学校に許可もらってバイトしてるんだ」

「え?」

「俺、母子家庭でさ。家計を助けるために小5からバイトしてる」



……そう、なんだ。



「新聞の配達と近所の八百屋手伝うくらいだから大したことしてないけど。
今日は八百屋の配達が多くて学校に間に合わなかった」



苦笑いの快を見て、そんな複雑な事情があるなら刹那に前もって聞いておけばよかったって後悔した。

だから先生たちも遅刻した快を怒らないんだ。



「……ごめん」

「ん?なんで?」

「気遣いがなってなくて」



謝ったら快は声を出して笑った。



「永遠って真面目だよな。そんなに気にしなくていいのに」



私だったらきっと嫌な気分になるのに大人だな。

すごいなぁ、学校に通いながら家族のためにバイトだなんて。

私も見習わなきゃ。