「永遠〜、数学の教科書借して!」



1限が終わった後、刹那がひょっこり教室に来て顔を出した。

クラスの女子は「刹那くんだ!」って言ってはしゃぎだす。

刹那は顔がいいからモテるみたい。



「やだ、昨日も貸したもん。いい加減自分で持ってきてよ」

「だってー、快。諦めて先生に怒られよっか?」

「え?……ちょっと待って」



イラッとしたけど、それが快のためなら話は違う。

私はリュックの中から数学の教科書を取り出して教室を出た。



「快に貸すならそう言ってよ」

「あは、ごめーん」



イラッとしたけど笑顔で快に教科書を渡す。

快は「ありがとう、助かった」と言ってまたあの優しい笑顔を向けてくる。

ほっこりしたけどやり切れなくて、刹那にこっそり「いじわる」と言ったら嬉しそうに笑った。

喜ぶなんて変なの。

ほんと、荒瀬の人間ってひねくれてる!

まともなのってお兄ちゃんくらいじゃない?