狼姫と野獣

止めようにもまず隙がない。

さてどうしたもんかとため息をついたその時。



「そもそもお前らのせいで俺は苦しいんだ!」

「はぁ?ふざけんなよ!」



快の一言にキレた刹那。

強烈な頭突きを食らわせもんだからに快の額から血が噴出した。

百戦錬磨の『野獣』が傷つけられたもんだからどよめきがあがる。



「きっかけはてめえの父親だろうがよ!
永遠に八つ当たりしてんじゃねえぞクズ!」

「黙れよ!荒瀬組なんていなけりゃ母さんと晴は死ななかった!」



まずい、ヒートアップしすぎだろ。

周りの目もあるしこれ以上は無駄試合。

もう勝負はついてる。



「もういい、快の負けだ」



殴ろうと振り上げた刹那の腕を掴む。

興奮していて俺の気配に気づけなかった刹那は驚いた顔をして目を見開く。



「悪いけどこれ以上は黙って見てられない」

「はぁ?……チッ」

「とはいえ刹那が怒る気持ちが分かる。快がごめん」

「なんでお前が謝んの?快は自分のケツも拭けねえわけ?」



落ち着かせるために謝ったけど刹那は眉間にしわを寄せて憤る。

……読み間違えたな、永遠を傷つけられたからって刹那がこんな怒るなんて。

親がヤクザだからもっと薄情なやつだと思ってた。