狼姫と野獣

「何の用だ」

「は?とぼけんなよ。永遠になんかしたろ」



笑みを消し睨みつける刹那。

横目で快が顔を歪ませて歯を食いしばるのが見えた。



「俺たち双子だからさぁ、あいつが気分悪ぃと俺も気分悪いんだ」



ゆっくり立ち上がり快に近寄る刹那。

周りのヤツらは気圧されて後ずさり。

完全に怖気付いてんじゃねえか。確かにこれだけ実力の差を見せつけられちゃ士気が下がるか。



「一発殴らせろ」



呑気に状況を把握してたら低い声とともに快に向けて拳が飛んできた。

速すぎんだろ、見えなかった。

快はギリギリで拳を受け止めて臨戦態勢に入る。



「殴っててめえの気が済むのかよ」

「分かんねえから殴らせろって言ってんだよ!」



その会話の直後、火蓋が落とされ壮絶なケンカが始まった。

すげえ、目で追えないケンカなんて初めて見る。

多彩な攻撃に拳を振るう音。よく快は刹那の不規則な動きについていけんな。

レベルの違いに「燈さん止めないんですか!?」とみんな焦ってるけど止める気は無い。

だってさすがに快が悪い。あれじゃ永遠がかわいそうだ。

それに荒治療じゃないけど、こうでもしないと快は素直にならねえだろ。

だから俺もしばらくは仲裁には入らなかった。