次の日、学校に快は遅刻してきた。

遅刻した、と分かったのは朝のHRが終わった後に廊下を走る姿を見かけたから。



「あれぇ、マジメなカイくんが遅刻なんて珍しいね」

「ね、私もそう思ってたところ」



唯も気がついていたみたいで、私の腕を引っ張りながら廊下に出る。

すると快は自分のクラスの前で担任の先生に謝っていた。

でも先生は怒らなくて「そんなに謝らなくていいよ。大丈夫、ご苦労さま」と労いの言葉をかけて職員室の方に歩いていった。

あの先生、すぐ怒るって有名なのに全然怒ってないなんて変なの。

その様子をなんとなく見ていたら、快と目が合った。

快は「おはよ」と笑いながら手を振ってくれた。



「……おはよう」



挨拶を返した時、なんだか違和感を覚えた。

あれ、笑いかけられただけなのに、なんでこんなにドキドキしてるんだろう。

確かにこういう爽やかな男の子には免疫がない。

荒瀬の男はみんなギラギラしてて裏がある人にばっかりだもんね。

きっとそういうことだと言い聞かせて教室に戻った。