狼姫と野獣

切れ味のいいハサミでショキショキ切られていく長い髪。

中学生の時、快がロングが好きだって言ってたからずっと伸ばしてたんだっけ。

……私、どんだけ快のこと好きなんだろ。



「さすが永遠、ボブでもかわいいわぁ」



切られた髪を虚しく見つめる。

だけど目の前に持ってきてくれた鏡を見たら憂鬱な気分が晴れた。



「え……かわいい」

「でしょでしょ〜?ボブなんて小学校以来だもんね。新鮮でかわいい」



こんなに短くしたの、久しぶりかも。

ボブにしたら幼くなるかなって思ったけど全然そんなことなくて。

むしろ重い雰囲気のロングよりこっちの方が好き。



「涼さんありがとう」

「ふふ、やっと笑えたね。よかった。
ウチの涼風はもう寝ちゃったけど明日起きたら喜ぶと思うよ。
かわいい永遠お姉ちゃんがもっとかわいくなってるんだから」



アポなしで来たのにこんなにも優しくしてくれる涼さん。

今度は嬉しくて涙があふれそうになった。


「……チッ、母さん俺も髪切って」



しかし、突然倖真が舌打ちしながら間に入ってきたから泣くのはやめた。

私、何か気に触ることした?