狼姫と野獣

「どうしたの!?この髪……」



いとこのお母さんですらこんなに心配するんだもん。

家族はもっと心配するだろうな。



「お願い、誰にも言わないで。私が悪かったの……」



今度は自分の不甲斐なさに涙が流れる。

いつまでたっても自分の問題すら解決できなくて周りを巻き込んでしまう。

悔しくて苦しくて、私は初めて家族以外に快のことを話した。

倖真と涼さんは何も口を挟まず真剣に聞いてくれた。



「分かった、あたしたちだけの秘密にしよう。
……とりあえず髪整えよっか」



涼さんはいつもと変わらない笑顔で笑いかけてくれた。

それが私には嬉しくてぽっかり空いた心にじんわり染みた。

涼さんはリビングにレジャーシートを敷いてその上に椅子を乗せた。



「さて、永遠こっちおいで。とびっきりかわいくしたげるから」



実は美容師な涼さん、ハサミやコームをテキパキ準備して私の髪をカットしてくれるらしい。

お言葉に甘えて「お願いします」と彼女に負けないくらいの笑顔で答えた。