狼姫と野獣

体を引き離し、私の肩を掴みながらはっきり口にした桐谷。

……それはお得意の冗談?

それとも、本当に私のこと好きなの?

そうだとしたら私───



「……ごめん」



質問に答えようとした直前、桐谷は目を逸らして謝ってきた。

それはなんに対しての謝罪なの?



「とりあえず、荒瀬の人が来るまでここで待機してな。
外よりは安全だから。俺がここにいてやる」

「ありが、とう」



今の発言がなかったみたいに普通に振る舞う桐谷。

その綺麗な横顔を見つめるけど目を合わせてくれない。



「桐谷、あの……」

「あー、分かってる口が滑っただけだから」

「え?」

「ふたりの間に入れないことは俺が一番よく知ってる。
フラれるのも分かってる、ただあまりにも永遠が可哀想でさ」



私が好きなこと、冗談じゃなかったみたい。

おかしいな、普通は気まずい雰囲気になるはずなのに桐谷とは変わりなく話せる。

実感がない、ってのもあるかもだけど。



「突拍子もないこといったら涙引っ込むかなって」

「うん……引っ込んだ」

「あは、そういうとこ素直でかわいい」



桐谷は乾いた笑いで私と顔を合わせる。

それから小さくため息をついて目を逸らした。



「あーあ、言っちゃったな〜。
けどなんかスッキリした。永遠はやっぱり全然ブレねえし」


背伸びをしながらいつもの調子に戻った桐谷。

切り替え早いな、私もさっきまで大泣きだったくせに大概だけど。


「あんなことされてもまだ快のこと好き?」

「好きだよ、頭おかしいって思われるかもしれないけど」

「そっか、それ聞いて安心した」



告白して断られたのに気が軽くなるとか変なやつ。

だけどそんな桐谷に救われたって思う自分もいる。

改めて快の親友が桐谷でよかった。

そう思いながらふたりで倉庫の出入口で組の車を待った。