狼姫と野獣

「私を殴って気が済むならいいよ」

「それで母さんと晴が戻んのかよ」

「……」

「お人好しがすぎるだろ、永遠」



何をしでかすか分からない目で快はハサミを手にとる。

桐谷が手当てに使っていたそれを片手に私の髪を一束手に取る。

次の瞬間───目の前で髪を切られた。

パラパラと散っていく長い髪。



「いい加減、俺のこと見限ってくれ」



だけど私の髪のことなんてどうでもよくて。

あまりにも痛々しい快の表情に涙がこぼれた。

何か声をかけたいのにできない。

胸の奥をえぐるような強い痛みがそれを邪魔する。



「好きになればなるほど苦しいんだ……」



快は涙をこらえながら本音をこぼす。

私は「ごめん」というのが精一杯でほかに何も言えなかった。