狼姫と野獣

「俺に関わるなって言ったよな」

「ごめんなさい。あの……」

「今日が何の日か知ってて来たのか?」

「……」


徐々に距離を詰める快。

顔をあげられず黙って頷いたら快は一歩後ずさりした。


「知ってんなら尚更なんで来た!?」


その瞬間、放たれる重い言の葉。


「母さんと妹が無理心中した日にお前の顔なんて見たくない。さっさと出てけよ」


今日は快の家族が亡くなった日。

あの暑い日、炎とともに全てを失った日。

分かっていたから今日はお墓に手向けるために花を買うつもりだった。

今日は快と鉢合わせるかもしれないから、私は決まって翌日お墓参りをしていた。

今日だけは互いに会いたくなかった。

だって会ってしまえばこうなることは目に見えてたから。


「何とか言えよ、なんなんだよお前……。
頼むから俺のこと諦めろよ」


泣きそうな声、震える拳。

……今日ばかりは殴られても仕方ない。